少年事件に強い弁護士事務所 弁護士法人 渋谷青山刑事法律事務所(東京都渋谷区)
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このページでは,少年事件において黙秘権を行使するメリット,デメリットなどについて解説いたします。
黙秘権とは,取調べや審判の場などにおいて言いたくないことは言わなくてもいいという権利のことを言います。黙秘権は,憲法によって認められている権利であり,捜査段階や審判段階の少年にも認められています。また,少年が逮捕されていようがいまいが,どちらでも黙秘権を行使することができます。この黙秘権は,捜査機関等から少年が自白を強要されないようにするための権利であり,年齢的にも精神的にも幼い少年にとっては,刑事事件の被疑者よりも重要な権利といえます。
単純に「黙秘」というと,取調べでも審判でも一切しゃべらないことを想像するかもしれませんが,事件に関する部分についてだけ何も話さない場合や事件関係者に関する話だけは何も話さないような場合(一部黙秘)であっても黙秘権を行使していることになります。黙秘権は少年の権利として認められているものですので,黙秘していたことを理由として非行事実を認定することはできません。
黙秘権は,「聞かれても,何も答えない」ことができる権利なので,ドラマのように,「黙秘権を行使します。」などという必要はありません。この黙秘権を行使した場合,以下のようなメリットがあります。
①後々に不利となる可能性がある証拠を作らせない
警察や検察の取調べにおいて,少年が何らかの供述をすると,捜査機関によって供述調書が作成されます。この供述調書が後々に審判で証拠として出てくることになりますが,この供述調書の中に客観的な証拠と矛盾するような供述があると,裁判官の心証が非常に悪くなり,少年に不利な判断がなされやすくなります。人間の記憶は曖昧なことが多く,自分では確かだと思っていても,実はそうではないということはよくあるのですが,少年の供述調書にそのような点があれば審判では大きなマイナスとなってしまいます。また,少年の場合,大人と比べて判断能力が劣り,警察官の誘導に乗って,自分にとって不利な供述調書を作られてしまいがちです。
そのため,黙秘権を行使して,捜査段階で一切供述調書を作らせないことによって,後々に不利となる可能性がある証拠を作らせないことが重要になります。
②証拠不足で家裁不送致処分や非行事実なしの不処分決定になる可能性がある
少年審判においても,刑事事件と同様に,犯罪事実が立証されなければ,非行事実は認定されないという建前になっています。そのため,捜査機関等の側で犯罪事実を立証できると思える程度の証拠を集める必要があります。この証拠の中には,当然少年の供述も含まれます。
少年が黙秘権を行使して,少年の供述が証拠にならなければ,少年の供述以外の他の証拠で立証しなければなりません。しかし,事件によってはそれが難しい場合もあります。そうなると,少年が黙秘している以上,非行事実を立証できないという事態も起こってしまいます。このような場合,検察官は事件を家庭裁判所に送らない家裁不送致処分を下すことがあります。また,検察官が家庭裁判所に事件を送致したとしても,少年審判において非行事実が立証されなければ,裁判官は非行事実なしの不処分決定(刑事事件における無罪判決に該当するもの)を下すことになります。
上で述べたように,黙秘権には行使するメリットもあります。しかし,現実問題としてデメリットもあります。
①捜査機関の取調べがきつくなりやすい
最初に述べたように,黙秘権は少年の権利です。ですから,少年が取調べにおいて黙秘することは少年の自由です。しかし,警察や検察としては,非行事実を立証するために,やはり少年の供述が欲しいと思うものなので,少年が黙秘していると,取調べにおける警察官や検察官の当たりが強くなります。
勿論,警察官が少年に対して拷問したり,脅迫したりすれば,違法な取調べということになりますが,警察官もその点は理解しているので,違法な取調べにならない範囲で供述を引き出そうとしてきます(例:しつこく何度も同じことを聞いてくる,他の決定的な証拠があるように匂わせてくる,など)。そのため,結果的に黙秘している場合には,取調べがきつくなる傾向にあります。
これは,刑事事件の被疑者であってもかなりつらいことなので,少年であればかなりの精神的負担になります。
②身体拘束期間が延びる可能性がある
少年事件においても,刑事事件と同様に,捜査機関が少年の非行事実を立証するための証拠を集めることになります。そのため,少年の供述が得られないとなると,捜査機関は非行事実を立証するために,少年の供述以外の証拠をより集めなくてはならなくなり,勾留期間を延長して捜査を行うことになります。その結果として,少年の身体拘束期間が延びる可能性があります。
また,家裁送致後に関しても,少年が黙秘している場合には,裁判官から,「反省していない」と捉えられ,観護措置(少年鑑別所に収容)が取られる可能性が上がってしまいます。そのため,少年が黙秘をしていると,家裁送致後も観護措置が取られて,身体拘束期間が延びる可能性があります。
③審判で相対的に重くなる可能性がある
少年が黙秘権を行使したとしても,法律上,それをもって不利益な取り扱いを受けないとされています。そのため,「黙秘していたのだから,実際は罪を犯しているのだろう」として,裁判官が少年に非行事実があるとの判断を下すことはできません。ただ,非行事実を認めた上で,少年にどのような処分を下すかという点については,黙秘権を行使したことが影響することはあります。
少年の供述以外の証拠で非行事実ありと認定された場合,正直にすべてを話していた少年に比べて,ずっと黙秘をしていた少年は反省の度合いが低いと判断されてしまいます。その結果,審判で言い渡される処分が自白していた少年に比べて相対的に重くなってしまう可能性があります。
少年事件では,刑事事件よりも,少年の反省という点に重きが置かれるので,黙秘権を行使したものの,非行事実が認められると,刑事事件よりも処分が重くなる可能性が高いといえます。
このように,黙秘権を行使することにはメリット・デメリットがあります。では,どういう場合に黙秘権を行使した方がいいのでしょうか。
いろんなサイトに黙秘権を行使した方がいいケースなどが書かれていますが,すべての事例で当てはまるものはありません。実際に黙秘権を行使するかどうかは,弁護士としっかり相談した上で決めるしかないでしょう。特に,少年事件においては,仲間内で「黙っておこうぜ。」と言われて,何も考えずに黙秘権を行使している場合もありますが,その黙秘権行使に意味があるのかどうか,しっかりと弁護士に相談しましょう。
【黙秘するかどうかを考える際の判断要素】
・犯罪事実を認めるのか争うのか
・少年が事実関係をしっかり話せる能力を持っているかどうか
・少年以外に共犯者がいる事件なのかどうか
・早期の示談交渉が見込める事件なのかどうか,など
代表弁護士:二宮 英人
(東京弁護士会所属)
弁護士登録をして以降,少年事件・刑事事件を専門分野に活動している。これまでに100件以上の少年事件で弁護人・付添人を務め,少年事件・刑事事件共に多くの解決実績を有する。
主な解決実績
・強制わいせつ事件における非行事実なし
不処分決定
・再度の保護観察中の傷害事件における
不処分決定,など
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こちらは,少年事件における黙秘権に関するページです。
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